総合健診
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総合健診と遺伝子検査
総合健診における遺伝子検査の役割
登 勉
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2010 年 37 巻 2 号 p. 239-245

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抄録

 ヒトゲノム計画の完了により,ヒトゲノムの全塩基配列が読了された。疾患の発症機序が分子や遺伝子のレベルで解明され,その分子異常を標的にした治療薬が日常診療において使用されるようになった。ゲノム情報を治療選択に利用するためには,遺伝子検査が重要であるという認識に異論はないであろう。一方,遺伝子検査を病気の予知予防に利用して,健康増進の役立てるという用途も考えられるが,これに関するコンセンサスは得られていない。
 本稿では,総合健診における遺伝子検査の役割について述べる。遺伝子検査の定義が,各学術団体や政府機関などによって様々であり,それぞれの定義する遺伝子検査が取り扱う検査のタイプにも違いがある。しかしながら,遺伝子検査を臨床応用する際に考慮すべき点に関しては,米国CDC がACCE モデルとして提唱しているが,我が国では統一された評価システムは存在しない。疾患頻度が比較的高いアルツハイマー病の場合,遺伝子検査は発症予測に有用でない。多因子病である生活習慣病の場合,多くの遺伝子と環境要因が発症に複雑に関与する。したがって,ある特定の遺伝子の検査のみで発症予測することは困難であり,また,多数の遺伝子を検査してもそれぞれの遺伝子の寄与度が異なるため,非常に複雑な予測式が必要になる。GWAS が進展し疾患関連遺伝子に関する報告が増えている。しかし,より正確な疾患の発症予測のためには,遺伝子検査の検査妥当性,臨床的妥当性,そして臨床的有用性に関する臨床治験が比露であり,環境要因と遺伝要因を考慮した発症予測が可能になる日が近いことを期待したい。

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© 2010 一般社団法人 日本総合健診医学会
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