抄録
総合商社丸紅は世界70カ国に事業所を持つ日本を代表するグローバルカンパニーの1つである。それゆえ、わが国の慣習、法令だけでなく、国際的な慣習や取り決めに対して会社として、従業員として、適切に対応しなければ業務の継続性のある発展や日常生活はあり得ない。
職場におけるタバコ問題についても同様で、タバコの規制に関するWHO枠組条約第8条で、タバコの煙に晒されることからの保護を求め、受動喫煙防止に関して、完全禁煙か、空間分煙か、どちらかの方策を各所の事業所で取り入れる必要がある。わが国では2003年5月に施行された健康増進法第25条で、受動喫煙防止のための措置を講じるように努めなければならないとされた(公共の場における受動喫煙防止は努力義務)。丸紅で受動喫煙防止を開始したのは1994年で、各自のデスクでの喫煙を禁止(空間分煙)し、2003年の職場における喫煙対策新ガイドラインにより、喫煙者の権利を確保しつつ、受動喫煙防止を目的とし、会議室の禁煙化、オープンスペースの禁煙化、社内喫茶室の禁煙化、喫煙室の設置、タバコ自動販売機の撤去などを実施した。社員教育として衛生委員会でのタバコ問題の審議、社内報や健保広報誌を活用した禁煙キャンペーン、健康診断結果表で喫煙者に対する禁煙指導、社内研修会で禁煙教育などを行っている。一方、事業所のある上記条約締結国の多くでは職場における完全禁煙を法整備し2007年から発効させている。
これらの施策により、男性社員の喫煙率は2001年48%と高値であったが、2010年36%へ低下した。また、男性新入社員の喫煙率は2001年56%、2010年17%と激減している。喫煙者の減少に伴い、国内の職場においても円滑でトラブルのない完全禁煙化も夢ではない。今後とも、労働者の健康確保と快適な職場環境の形成を図っていきたい。