抄録
当社では、日本人と任地国従業員(ローカルスタッフ)の間で、日本人だけ特別扱いをしないという経営上の方針がある。一方で、一般定期健診を含め、日本独自の健康管理の歴史と仕組み、産業保健サービスが存在する。また、日本の医療水準は世界トップレベルであるため、自国を離れて暮らす日本人に対して健康管理および医療サービスへの配慮をゼロにすることは難しい。特にアジア地域では、日本に比べて、衛生環境が悪く、医療水準が低い地域があり、現在も一定のサポートが必要である。その意味で本シンポジウムは、日本人の海外勤務者の健康管理に焦点を当てながら国際社会における健診のあり方を議論するよい機会になると信じている。
海外勤務者の健康管理においては、赴任中に大きな健康障害を生じないだけではなく、生涯健康管理の観点からも、出国前から帰国後まで一貫性のある継続した健康管理をすることが望ましい。そのために、海外健診および事後措置の機会を利用することが有用である。また救急医療・緊急搬送などの対応の場合は、医療サポートエージェント・現地法人・本社人事総務担当者・産業医等が連携する医療サポート体制を構築することが必要である。
本稿では、産業医としての立場から、海外健診を軸とする海外勤務者の健康管理活動を紹介する。また、健診ユーザーの立場から、当学会の会員である健診機関および企業外労働衛生機関の皆様には、海外健診および事後措置において付加価値の高いサービスを提供していただき、グローバルに展開する日系企業の健康管理活動のサポートをしていただくことを期待している。