総合健診
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原著
健常高齢者の形態、機能、心理・社会的評価:Health Research Volunteer Studyの性差に関するサブ解析
道場 信孝佐藤 淳子甲斐 なる美那須美 智子斉藤 幸子倉辻 明子平野 真澄赤峰 靖裕櫻井 由美土肥 豊日野原 重明
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2013 年 40 巻 3 号 p. 390-398

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抄録

 これまで高齢者の形態、機能、心理・社会的側面を網羅した性差に関する前向きコホート研究は見られない。本研究ではHealth Research Volunteer Studyのsub-analysisとしてこれらの問題を検討した。対象は全407例中これらの問題の解析に必要で、かつ適切な全てのデータを有する257例である(男性 115例;78±4歳:女性142例;年齢77±4歳)。年齢、観察期間、そして健康背景でも糖尿病、喫煙歴を除いて高血圧、高脂血症について性差は見られなかった。形態に関しては5年の経過で両性ともそれぞれ縮小の傾向を示したが、前後とも筋肉、骨量に関して男性が女性より有意に大きな値を示した。機能的にも聴力を除く全ての項目で両性とも低下を示したが有意な性差を認め、筋力においては男性が女性を上回る値を示した。心臓血管系の指標に関しては上腕の血圧、心拍数では男性の拡張期圧を除けば加齢による変化は両性において認められなかったが、性差に関しても同様で男性の調査開始時の拡張期圧を除いて有意差はなかった。これに対してbaPWVは両性で加齢とともに有意に高くなったが、性差は認められず、このことは両性とも動脈の硬化が加齢とともに進行することを示す。これに対してABIは調査前後で両性とも有意に減少しており、また調査前後とも有意に女性で低値を示した。これは下肢血管の機能とは関係なく身長の有意な加齢による変化と、有意な身長の性差を意味すると考えられる。血液検査ではヘモグロビン値が正常範囲内ではあるが5年の経過で両性とも有意に低下し、また有意な性差を認めた。クレアチニン値にも同様の徴候が見られ、これは筋肉量に関連するものと思われる。その他、転倒、体力・活力の低下感、うつの傾向、疼痛は有意に女性で多く見られた。MMSEに有意差はなかったが、自己効力は男性で有意に高かった。

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© 2013 一般社団法人 日本総合健診医学会
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