わが国は、戦後の公衆衛生の普及、国民皆保険体制の確立、生活環境の向上等に伴い、国民の健康状態は著しく改善され、乳幼児死亡率の低さ、平均寿命ともに世界のトップクラスを達成するに至った。また、疾病構造の慢性疾患へのシフトに伴い、あらためて予防を中心とした保健事業の重要性が認識されるようになった。
これからの時代は、長寿に加え、健康寿命の延伸が求められており、日本人の死因の主な疾病であるがんや循環器疾患等の生活習慣病予防がより重要となる。
そのためには、子どもの時から正しい生活習慣を習得する必要があり、学校現場等における健康教育の重要性が指摘されている。
健康教育のテーマは、その他にも感染症、メンタルヘルス、性教育、命の大切さなど多岐にわたり、人生を通じた生涯保健の基盤づくりになると考えている。
また、わが国の保健事業は、各法律に基づく乳幼児健診および妊婦健診、学童健診、事業主健診、特定健診等の健診事業、あるいは予防接種法に基づく定期接種等、国民のライフサイクルに応じた対応が整備されてきた。
そして、これらの各種保健事業の多くに医師会(主に郡市区医師会)が積極的に関与し、住民の健康の保持・増進に寄与してきた。
今後、各地域における保健活動の実践に際して、国の健康づくり対策として示された健康日本21(第二次)の運動とどのようにリンクさせていくのか、それぞれの健康指標を達成するにあたり、地域住民への健康教育とどのように関連付けていくのか等、自治体と医師会の連携をさらに強化して実効ある事業を展開することが求められている。
日本医師会では、今期の会内委員会のうち公衆衛生委員会において、「医師会活動を通した国民のための地域保健のあり方」、また学校保健委員会では「これからの学校健診と健康教育」について、会長諮問が提示され現在鋭意検討しており、今後の地域保健活動に際する医師会の関与のあり方等について考察する。
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