抄録
人間ドック受診者において、新規開発された高感度測定系にて測定した血中心筋トロポニンI濃度の分布特性ならびに通常の健診項目との関連性を検討した。また、現病歴、既往歴および検査値に基づき非健常者基準を設け、健常者群および非健常者群間の血中心筋トロポニンI濃度を比較した。
全対象者283例のうち、血中心筋トロポニンI濃度がバックグラウンド以下の濃度(ゼロ濃度)の例数は、従来法で279例であったのに対し、高感度測定系では9例であった。高感度測定系にて測定し得た血中心筋トロポニンI濃度は、女性に対して男性で、また年齢の増加とともに有意な高値を示した。重回帰分析の結果、年齢および性別が血中心筋トロポニンI濃度と独立した関連因子であった。
健常者として分類された者は283例中166例(男性94例、女性72例)であった。一方、非健常者と分類された約7割が高血圧基準あるいは脂質異常症基準に該当し、非健常者における血中心筋トロポニンI濃度は、健常者に対して有意な高値を示した。また、非健常者基準のうち、高血圧、腎機能低下、脂質異常に該当する対象者の血中心筋トロポニンI濃度は、非該当者に比較して有意な高値を示した。
以上より、高感度測定系を用いることにより、人間ドック受診者の低濃度の血中心筋トロポニンI濃度が測定可能となり、心筋障害の微細な変化を検出できる可能性が示された。今後は、性別および年齢を考慮した心筋マーカーとしての基準値の設定が課題である。