総合健診
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総合健診と予防医学的根拠
肝機能検査、肝障害について─健診における問題点
岡上 武水野 雅之
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キーワード: AST, ALT, 血小板数, 基準値
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2015 年 42 巻 2 号 p. 307-312

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抄録

 健診において肝障害をスクリーニングする検査項目で重要なものはAST、ALT、γ-GTP、血小板(PLT)数である。AST、ALTの基準値は施設により大きな差があり、一昨年我々が調査した本邦の78大学附属病院のALT基準値は25IU/L以下から48IU/L以下まで様々で、またPLTも総合健診や人間ドックでは基準値が13~35万と幅広い。近年肝臓に異常の無い場合のALT値は男性で30IU/L以下、女性で19IU/L以下とイタリアから報告されており、わが国でも早急にAST、ALTの基準値を男女別に見直し、施設間の差をなくすことが必要と考える。
 異常なし、軽度異常、要経過観察、要治療などの判定はこれら個々の検査値のみで判断されているが、これにも大きな問題がある。すなわち、肝疾患が進行し肝硬変になるとALTは低下し、多くは40IU/L以下となり、30IU/L以下を示す例もかなりある。一般に慢性肝炎ではAST<ALTであるが、肝硬変になるとAST>ALTとなる。また肝疾患が進展(線維化進展)するとPLTは減少し、PLTが13万位になるとかなり進行した慢性肝炎か初期の肝硬変のことが多い。なお、肝臓に異常の無い者ではAST、ALTともに30IU/L以下で、かつAST>ALTである。すなわち値のみでなくAST/ALTとPLT数を加味した判定が必要である。本稿ではこれら検査値とそれに基づく判定の問題点について述べた。

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© 2015 一般社団法人 日本総合健診医学会
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