抄録
本研究では、室内プールで運動を行う者の水分補給に対する意識およびその実態について明らかにするために、性、年齢区分別に検討を行なった。調査は質問紙を用いて行い、男性470名、女性535名の計1,005名(56.0±15.3歳)を対象に検討を行なった。水中運動中、喉がかわいていなくても水分補給を行うべきと考える者は、男女ともに、44歳以下が最も多く、65歳以上で最も少なかった。一方で、飲むべきか分からないと回答する者は年齢区分が高いほど多かった。運動前、運動中、運動後に水分補給を行う者は、男性では、いずれも44歳以下で多く、年齢区分が高くなるにしたがい減少した。女性では、年齢区分間の違いは認められなかった。男女ともに運動後に水分補給を行う者は77~94%であったのに対して、運動中では15~34%であった。12.7%は運動前、運動中、運動後を通じて、全く水分補給を行っていないことが明らかとなり、その特徴として、年齢区分が高いこと、水中運動中の発汗の自覚がないことおよび水中運動時の水分補給に対する知識面の不足が示唆された。これまでに水中運動中に経験した脱水が疑われる症状として、男性は、筋肉の痙攣(36.6%)、口の中がかわく(28.5%)、脱力感や倦怠感(18.8%)の順で多く経験しており、女性では筋肉の痙攣(31.9%)、口の中がかわく(24.7%)、呼吸が異常に速くなる(12.8%)の順で多く経験していた、男女とも何らかの自覚症状を1つ以上経験していた者は全体の57.1%であった。以上より、安全な水中運動の実施のためには、適切な水分補給を行うよう、より一層の啓発の必要性が示唆された。