総合健診
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原著
特定健康診査に対応した経年データ分析とベイジアンネットワークへの適用
宮内 義明西村 治彦稲田 紘
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ジャーナル オープンアクセス

2015 年 42 巻 5 号 p. 479-491

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抄録

 メタボリック症候群に焦点を当てる特定健診では、受診者の健康状態を示す客観的な検査データと、生活習慣を回答する主観性を含む問診データの両者を結びつけて状況を把握することが求められる。そのための新手法として著者らはベイジアンネットワークによる特定健診評価システムの構築に取り組んできた。本研究では、特定健診導入以前の保健指導の影響下にない健診データを分析することで、介入の無い通常の経過での支援レベル間の移動率を得ることができた。これを考慮に入れることで、保健指導レベルの改善状況に対して実質効果を算出できた。これは、特定保健指導のより的確な評価につながるものと考える。次に健診判定基準値による検査データの2値化と、論理和のビット表現で作られる検査16状態を提案し、その有用性を確認した。階層化による支援レベルに対して、体型、血糖、脂質、血圧の各因子を対等に扱う検査16状態を相補的に用いることで、より充実した保健指導につながることが期待される。更に、これらを特定健診のためのベイジアンネットワークに反映させ、経年の問診データと検査データの組み合わせにより、生活習慣が健康状態に影響を与えるまでの時間差について評価を行った。その結果、問診データと検査データの因果関係をより良く反映しているのは越年データセットであった。これは、問診データが表す生活習慣の影響が検査データに示される健康状態に現れるまでに1年程度の遅れがあることを示しており、保健指導での過去に遡った生活習慣の把握の重要さが示唆された。また、受診者事例を用いた検討では、保健指導の場で指導者と受診者が共にベイジアンネットワークを用いて生活習慣の改善を目指せることを示した。以上の検討を通して、特定健診のためのベイジアンネットワークが保健指導サポートツールへと発展する可能性を示した。

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© 2015 一般社団法人 日本総合健診医学会
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