総合健診
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日本総合健診医学会 第44回大会
日本総合健診医学会 第44回大会・シンポジウム2 これからの産業保健と総合健診
ストレスチェック制度の概要と今後の展望
増田 将史
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ジャーナル オープンアクセス

2016 年 43 巻 3 号 p. 455-463

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抄録
 ストレスチェック制度は当初、自殺予防対策の観点から、うつ病のスクリーニングとして検討が開始された。議論の過程で、結果に基づく労働者の不利益取扱い(解雇等)への懸念から、労働者へのストレスの気付きの機会の提供という趣旨に変遷していった。ストレスチェックは労働者の同意なく事業者が結果を把握してはならないこととされ、また不利益取扱いを禁じる規定が設定されている等、厳格かつ特殊な情報管理が要求されている。また、部署単位での集団分析結果に基づく職場環境改善が求められる等、個を対象とするこれまでの健康管理とは一線を画した特殊な位置づけとなっている。
 ストレスチェックは質問項目や判定基準の設定が各事業場に委ねられているため、精度管理を実施する上で大きな課題となることが予想される。自記式質問票による検査のため、不利益取扱いを懸念して自身のストレス状況を正しく反映しないように回答を操作することも可能である。スクリーニングとしての有効性については、今後の十分な検証が必要である。
 「総合健診」としてのストレスチェックは客観的指標によるストレスの定量化、他の疾病とストレスとの関連性の検証等が今後の方向性として期待される。集団分析については、メンタルヘルス関連指標(メンタルヘルス不調に起因する休業日数等)との相関等を分析することで、データヘルス計画、ひいては健康経営に資する取組みになることが期待される。
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© 2016 一般社団法人 日本総合健診医学会
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