総合健診
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日本総合健診医学会 第45回大会
日本総合健診医学会 第45回大会・シンポジウム4 アルコールと健康管理
アルコール診療における問題点と当院での取り組み
菊池 真大水野 有紀佐藤 寧子杉原 正子堀江 義則
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2017 年 44 巻 5 号 p. 677-682

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抄録

 当院のアルコール診療では、精神科がアルコールや薬物依存のプログラムを持ちあせてないこともあり、純粋の依存症による精神症状で精神科が加療するケースは少なく、アルコールに起因した消化器症状が前面にたち、消化器内科に入院するケースが多い。消化器内科全体でも、リピーターを含めアルコール関連疾患が多く、アルコール診療の重要性を示唆する。一方で臨床的に問題になるのは、レジデントを含め、アルコール飲酒の問診が不十分な点にある。離脱症状の管理やアルコール依存症自己診断(CAGE)テストでさえ理解せずに診療しているケースが多い。コメディカルにおいてはさらに深刻で、以前のトラウマからかアルコール患者に対して敬遠する傾向もあり、アルコール診療に対する固定観念の変革が不可欠である。困難を極めるのは患者背景を加味した上で、いかに今後断酒できる環境整備が出来るかという点にある。当院の取り組みとして、内科・精神科間の連携を強化し、内科入院早期の段階で、精神科にコンサルトしメンタルケアの介入を行っている(アルコール多飲歴入院患者の約20%で実施)。医師、ケースワーカー、精神看護専門の看護師などで構成されたリエゾンチームにより回診が行われ、症例によっては内科加療に目途がついた時点で精神科に転科し2週間程の教育入院を引き続いて行う場合もある。その後精神科医の判断で、アルコール症センターに教育入院を依頼するケース、近医のアルコール診療クリニックに依頼するケース、当院で消化器内科外来と並行して精神科フォローするケースなどがある。このようにアルコール診療においては、1内科診療医の裁量では限界があり、精神科との強い連携をとり、看護師、保健師を含めた包括的な診療体制の構築が必要であると考えられた。

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© 2017 一般社団法人 日本総合健診医学会
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