抄録
ヘリコバクター・ピロリ(HP)は、近年、胃がんの発症にも大きく関係していることが分かり関心度も高まってきた。しかし、HP検査の多くは一般健診項目に入っていることは少ない。そこで、健康診断受診者に対してオプションとしてHP検査を受診勧奨して、検査後の行動を分析し、HPに対する認識と理解度を検討した。2014年7月~2015年6月に健診項目として血中HP抗体(HP抗体)検査をした395例をA群、2015年7月~2016年6月にHP抗体検査をした704例をB群とし、健診項目で同検査をした323例をB1群、同年の健康診断案内送付時にHP抗体検査のオプション申込用紙を同封し、同検査を追加した381例をB2群とした。A群に対しては診察時に除菌治療の説明をしなかったが、B群に対しては、診察時に口頭による陽性時の除菌治療の必要性と、専門医への紹介状を健康診断結果と併せて送付することを説明した。HP抗体検査実施率は、両群とも40歳代が約4割と最も多く、40・50歳代で全体の7割近くを占めていた。HP抗体検査陽性における二次検診実施率は、A群:45.1%、B1群:42.1%、B2群:42.3%であった。また、男性ではA群:42.6%、B1群:34.1%、B2群:38.8%、女性ではA群:52.9%、B1群:69.2%、B2群:50%であった。
HP抗体検査の関心度は高く、実施者はオプション勧奨することでB群がA群の約2倍に増えた。しかし二次検診実施率は低調であった。よって、HP感染症への意識は高まっていても、二次検診の必要性を感じず中途半端な状態で健診を終えていることが確認できた。当健診センターでは、2016年7月より二次検診の受診を促すために、二次検診に該当する健診診断結果にはリーフレットを同封することにした。また、人間ドックでは電話にて受診を勧奨し、フォローアップを行っている。これらを今後も継続し、二次検診受診率の向上を目指したい。