抄録
【目的】心房細動(AF; Atrial fibrillation)が原因でおこる脳梗塞(心原性脳梗塞)は、他の原因でおこる場合より重篤なことが多い。このため、企業に勤める従業員に対して、AFの認知度の調査を施行し、AFの早期発見とそれに起因する脳梗塞発症の予防の検討を行った。
【対象と方法】ライオン株式会社平井研究所に勤務する50歳以上の従業員に対し、AFの疾患として認知度、AFが脳梗塞の危険因子であること、AFが原因の脳梗塞予防薬の存在、自己検脈の有無などをアンケートにて調査した。
【結果】回答が得られた80名の解析を行ったところ、AFの認知率は72.5%であったが、無症候性のAFの認知度は46.3%、AFの血栓形成の認知度は43.8%と低い傾向であった。AFが脳梗塞の原因となることは54%と半数以上が知っていたが、AFによる脳梗塞の予防薬を知っている割合は33.8%と低値を示した。
【結語】AFの認知度やAFが脳梗塞の危険因子であることの認知度は、高血圧や糖尿病と比べ低く、産業保健の場においては、脳梗塞予防を念頭におき、AFの疾患概念や脳梗塞発症予防薬の存在の説明、検脈の習慣づけの普及などAFに対する介入が健康診断後や保健指導の面談時などに必要と考えられた。