総合健診
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原著
人間ドック内視鏡受検者における逆流性食道炎のリスク因子
田中 和子堺 義子高垣 裕美子辻野 京子康永 真紀中西 英子南 慶子古林 孝保徳永 勝人
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2017 年 44 巻 6 号 p. 819-824

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抄録

【背景と目的】我国では、逆流性食道炎の頻度が急増している。欧米では、逆流性食道炎を背景とするバレット食道が、食道腺癌のリスクとされている。日本人における研究でも逆流性食道炎はバレット食道のリスクとされ、その対策が急務となっている。当健診センター人間ドック内視鏡検査で発見された逆流性食道炎の背景を検討し、その予防のためのリスク因子を求めた。
【方法】2015年4月1日より2016年3月31日までの内視鏡受検者1,062人(平均年齢55.3歳)、男性680人(同56.5歳)、女性382人(同53.1歳)を対象とした。ロサンゼルス分類-GradeA以上の逆流性食道炎あり群220人となし群842人の2群について性、年代、肥満(BMI25以上)、油物多い、飲酒(1日2合以上)、ストレス、喫煙、萎縮性胃炎なし(木村・竹本分類C-0,1)、食道裂孔ヘルニア等の9個の背景因子の頻度比較をχ2乗検定で行った。次に、逆流性食道炎の有無を目的変数とし、上記背景を説明変数として、ロジスティック回帰分析により逆流性食道炎の予測因子を求めた。
【結果】逆流性食道炎の頻度は全体で20.7%、男性27.6%、女性8.4%であった。男性の60代未満は60代以上より高頻度であったが、女性では両年代間の差はみられなかった。上記背景の内、食道炎あり群ではなし群に比べ、男性、肥満、飲酒、喫煙、萎縮性胃炎なし、食道裂孔ヘルニアの頻度が有意に高値であった。ロジスティック回帰分析の結果、予測因子として有意であったのは、オッズ比順に、食道裂孔ヘルニア(3.4)、男性(3.3)、肥満(1.8)60歳未満(1.7)の4因子であった。2合以上の飲酒は有意ではないがリスク増加の傾向を認めた。萎縮性胃炎なし、喫煙、油物多い、ストレスは有意な因子ではなかった。
【結論】逆流性食道炎は女性の高齢者に多いという従来の報告とは異なり、女性の年代による頻度差はみられなかった。萎縮性胃炎なしが有意なリスクとならなかったのは、萎縮あり群に、胃酸分泌の明白な低下が報告されていないC-2を含めたことによる可能性がある。逆流性食道炎の予防には、まず食道裂孔ヘルニアを内視鏡検査で確認すること、男性性差や年代を考慮すること、生活習慣の改善により肥満予防を勧めることが重要と考えられた。

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© 2017 一般社団法人 日本総合健診医学会
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