抄録
【目的】本邦で大腸がん(colorectal cancer; CRC)の発生、死亡が増加しており、CRCの発生要因として生活習慣、メタボリック因子との関連が示唆されているが、本邦での両者の関連を示す大規模な報告はない。今回、CRCの前癌病変と考えられている大腸腺腫性ポリープの発生に対するリスク因子について、人間ドックにおける総合的な健診データを用いて、メタボリック症候群(MetS)に焦点をあてて検討を行った。
【方法】2012年8月から2015年7月の間に当院で総合的な人間ドック健診を行った7,213名の受診者中、大腸内視鏡検査を受けた者が1,835名で、胸部CTを受検しなかった者を除外した1,772名を対象とした。年齢、性別、身体計測(体格指数(BMI))、CTにより計測した内臓脂肪面積(VFA)、血圧、血液生化学的データ(脂質代謝、糖代謝)、高血圧、脂質異常症、糖尿病の治療歴を独立変数として検討を行った。大腸腺腫性ポリープ(腺癌を含む)と各変数との関連を単変量解析により評価し、さらに多重ロジスティック回帰モデルを用いた多変量解析により検討を行った。
【成績】対象のうち506例(28.6%)に大腸ポリープを認め、進行がんは5例(0.28%)であった。446例(25.2%)がMetsに該当していた(男性31.3%、女性12.0%)。単変量解析では性別、年齢、BMI、VFAがポリープと有意な関連性を認め、また、MetSは有意に大腸ポリープと関連していた(P<0.01)。ロジスティック回帰分析では、性別と年齢、内臓脂肪蓄積、さらにMetSを構成する要因として糖質異常がそれぞれ大腸ポリープの独立したリスク因子であった。
【結論】本研究により加齢、肥満、男性およびメタボリック症候群に該当することが日本における大腸腫瘍発生のリスク因子である可能性が明らかとなった。