抄録
我が国の労働者一人当たりの労働時間は欧州諸国と比べて長く、週60時間以上の労働をしている労働者の割合も高い。
長時間労働は、健康の確保だけでなく、仕事と家庭生活との両立を困難にし、少子化の原因や、女性のキャリア形成を阻む原因、男性の家庭参加を阻む原因になっている。このため、これを是正し、ワーク・ライフ・バランスの改善、労働参加率の向上、労働生産性の向上に結びつける必要がある。
2016年3月28日に政府がとりまとめた「働き方改革実行計画」において、労使が合意すれば上限無く時間外労働が可能な現行の労働基準法の仕組みを改め、36協定でも超えることのできない上限を法定する方針が決められた。時間外労働の上限は、1か月45時間、年360時間を原則とし、臨時的な特別の事情がある場合でも年720時間、1か月100時間未満、複数月平均80時間、月45時間を超える特例の活用は年6回までとする。
あわせて、勤務間インターバルの設定を事業主の努力義務として法律に規定すること、中小企業の時間外労働に対する割増賃金率を引き上げること、一定日数の年次有給休暇の時季指定を使用者に義務付けることなどの改正を行う。
このような法律改正について、2017年9月15日付けで労働政策審議会の答申を得たところであり、政府において法律案の策定準備を進めていく。