抄録
大腸がん検診(IFOBT 2日法)が必須の協会けんぽの生活習慣病予防健診結果から、性別・検体本数別の職域大腸がん検診受診率、精検受診率を比較、検討した。対象は2011年4月から2016年3月までの5年間の当協会での協会けんぽの生活習慣病予防健診受診者。5年間の健診受診者は延べ218,764人、うち男性158,432人、女性60,332人で、期間中男性85人、女性16人で大腸がんが発見された。5年間で検体2本提出者は健診受診者の男性で69.7%、女性59.2%、1本提出者は男性21.6%、女性24.1%であった。5年間の大腸がん検診受診率は89.1%、要精検率5.1%、精検受診率36.1%、発見率0.052%で、男性の受診率は91.3%、要精検率5.5%、精検受診率33.4%、発見率0.059%、女性の受診率は83.3%、要精検率3.8%、精検受診率47.1%、発見率0.032%であった。
5年間の男性の検診受診率は各年齢階層とも90%以上であった。女性の30歳台、40歳台の受診率は男性に比較して低く、50歳台から男性に近づいていた。検体1本提出者の検診受診率は男女とも30歳台が最も高く、年齢階層が上がるにつれて減少した。2本提出者では、女性は30歳台、40歳台の受診率が男性よりかなり低く、50歳台以降は男性とほぼ同様の推移をしていた。この要因として生理の影響が考えられた。要精検率は男性が高く、男性の2本提出者が全年齢階層で最も高かった。精検受診率は女性が高く、男女とも40歳台が最も低かった。2本提出者の検診受診率、要精検率、精検受診率は、男女とも1本提出者より高かった。大腸がん検診の啓発とともに、1本提出者にもう1本の提出を勧める事は、精検受診率の向上に効果があると考えた。