2018 年 45 巻 5 号 p. 641-647
脳卒中と心血管疾患は、日本人の総死亡の約30%を占め、後期高齢者に限定すると死因の1位である。後期高齢者が激増する中で、心血管疾患の予防は就労世代こそ注意を払われるべき世代である。
我々は、就労世代の心血管系疾患発症に及ぼす影響を、メタボリックシンドローム・血圧・喫煙について検討した。東海地区の就業男性30,636名を2000年から8年間フォローアップし、メタボリック・血圧・喫煙・尿蛋白・尿酸値が心血管系疾患発症に及ぼす影響を検討した。心血管系疾患・総死亡の調整ハザード比は、メタボリックシンドロームを有すると2.63[95%CI: 1.32-4.72]ならびに4.88[2.95-7.96]と極めて高かった。コンポーネントでは、血圧上昇のイベント発症関与が大きく、次いで血糖上昇であった。血圧では、収縮期血圧109mmHg以下を基準とすると120~129mmHgより調整ハザード比2.02[1.15-5.89]と上昇、140-149mmHgでは7.91[4.28-14.6]と極めて上昇していた。一方、拡張期血圧74mmHg以下を基準とすると、90mmHg以上より急に調整ハザード比は上昇し、90-94mmHgでは10.1[5.14-19.2]であった。喫煙と心血管系疾患発症に関しては、喫煙本数が増加するにつれて心血管疾患は量反応関係を示しており、非喫煙者を基準とすると、1日21本以上の喫煙者の調整ハザード比は、3.19[1.66-6.41]であった。一方、禁煙により総死亡ならびに心血管系疾患は減少しており、4年以上の禁煙では調整ハザード比は0.57[0.34-0.91]ならびに0.27[0.13-0.50]であった。また、尿蛋白+以上ならびに尿酸値7.0mg/dL以上は有意に高血圧症の発症が高かった。
我が国では、就業者に対する健康診断を使用者に対して義務づけがなされており、将来の脳卒中ならびに心血管疾患の発症予防に健診結果は有用に活用すべきである。