総合健診
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日本総合健診医学会 第46回大会
日本総合健診医学会 第46回大会・教育講演5 脳心血管病予防のための降圧目標
楽木 宏実
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ジャーナル オープンアクセス

2018 年 45 巻 5 号 p. 635-640

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抄録

 日本高血圧学会による高血圧治療ガイドライン2014においては、年齢と病態に応じて3つの降圧目標値が示されている。原則として140/90mmHg未満が降圧目標で、75歳以上では150/90mmHg未満を目標とし、忍容性があれば140/90mmHg未満を目指すとしている。一方、糖尿病患者や蛋白尿を伴う慢性腎臓病(CKD)患者においては130/80mmHg未満を目標としている。75歳以上においては、150/90mmHg未満を必須とし、忍容性があれば140/90mmHg未満、糖尿病や蛋白尿陽性CKD患者ではさらに130/80mmHg未満を目指すが、厳格な降圧に関するエビデンスは乏しい。このような原則とは別に、130/80mmHg未満を目指すことが望ましい病態として、抗血栓薬服用中の患者、ラクナ梗塞、脳出血、くも膜下出血既往患者、心筋梗塞後や心血管イベントリスクが重積した心臓病合併患者をあげている。脳心血管病予防に関する包括的リスク管理チャートは、このガイドラインに沿ってより実臨床でのエッセンスに絞って記載されている。その後、降圧目標を120mmHg未満群と140mmHg未満群で心血管病発症を比較したSPRINT(Systolic Blood Pressure Intervention Trial)が発表され、120mmHg未満群での優位性が示された。この結果を受けて2017年11月に米国心臓病学会・協会(ACC/AHA)などの団体による新しいガイドラインが発表された。日本高血圧学会も2019年のガイドライン改訂を目標にシステマティックレビューを行っており、その改訂を受けて脳心血管病予防に関する包括的リスク管理チャートも改訂されることと考える。

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© 2018 一般社団法人 日本総合健診医学会
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