総合健診
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日本総合健診医学会 第46回大会
日本総合健診医学会 第46回大会・シンポジウム5 健診における包括的リスク管理チャートの導入 「脳心血管病予防に関する包括的リスク管理チャート」について
寺本 民生
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ジャーナル オープンアクセス

2018 年 45 巻 5 号 p. 654-659

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抄録

 わが国の死因では、主として血管疾患である心疾患と脳血管障害を合わせると、第一位になる。また、医療費の筆頭疾患でもある。したがって、我が国では、血管病予防が極めて重要な保健対策といえる。また、我が国の代表的疫学研究である久山町研究において、最近は脳血管障害に対する危険因子の寄与度として肥満や糖尿病、脂質異常症が高くなってきていることが示されている。したがって、我が国の脳心血管病を予防するためには、血圧はもとより肥満や糖尿病とともに脂質異常症など生活習慣病を管理することが重要であることは言うまでもない。さらに、これらの疾患群は頻度の高い疾患でもあるので、合併していることもあり、その場合には包括的な管理が要求されることがある。

 現在ほぼ確立されているLDL-C、高血圧、血糖、肥満、慢性腎臓病などの脳心血管病の危険因子に対応すべく各学会では診療ガイドラインをまとめている。このような学会を中心に、統合的な血管病管理指針を示そうという機運が高まり、日本内科学会を中心として11学会がその趣旨に賛同し、「脳心血管病予防のための包括的リスク管理チャート」を作成し、2015年に発表した。その基本的コンセプトは、生活習慣の包括的管理によるリスク(喫煙、肥満、血圧、血糖、血清脂質、腎機能など)の改善であるが、各疾患の重積の場合には、薬剤介入を含めた包括的管理が重要であることも強調したことである。また、我が国は、世界に冠たる長寿国家である。そして、高齢者ほど認知症も含めた脳心血管病の好発者であることも認識する必要がある。

 これらの危険因子は一般医家が対応することが多いことから、プライマリーケアの医療において、「脳心血管病予防のための包括的リスク管理チャート」を有意義に活用され、少しでも脳心血管病予防に寄与することができることを念じたい。

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© 2018 一般社団法人 日本総合健診医学会
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