総合健診
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日本総合健診医学会 第46回大会
日本総合健診医学会 第46回大会・シンポジウム 2 COPD ~早期診断から治療への展開を考える~ 肺癌検診とCOPD
橋本 直純
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ジャーナル オープンアクセス

2018 年 45 巻 6 号 p. 770-773

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抄録

 喫煙者の高齢化に伴い喫煙関連疾患である慢性閉塞性肺疾患(COPD)と肺癌は疾病負荷の増加に深く関与している。本邦では、労働安全衛生法に基づく法定健診や肺癌検診での胸部レントゲン撮影の機会があり、肺癌の早期発見に寄与している。

 喫煙による気管支上皮細胞・肺胞上皮細胞へのダメージが遺伝子異常の蓄積につながり肺癌発症に影響をもたらすことは広く認識されている。喫煙者に発症する肺癌組織型は扁平上皮癌が腺癌に比較して多いとされていた。近年、フィルター付の喫煙嗜好が肺腺癌の発症増加につながっているとする報告がなされている。この喫煙による気管支上皮細胞・肺胞上皮細胞へのダメージはCOPDを誘発する因子にもなっていて肺癌発見時にCOPDが併存することが多くなる。肺癌症例におけるCOPD併存率を評価するために、我々は気管支鏡検査を受けた肺癌症例に呼吸機能検査をスクリーニング評価として実施した。その結果、COPD併存が半数以上の症例に認めることを明らかにした。あらためてCOPDは喫煙歴を有する高齢男性には一般的な併存疾患であることが確認された。本邦のCOPDの潜在的罹患数とCOPDの実治療者数には20倍以上の開きがある。肺癌検診の際にどのような対象者に呼吸機能検査を提案することが効果的にCOPDを診断することにつながるかを提案していくことは重要な課題である。また、COPDの早期発見がどのような臨床的重要性をもたらすかを明らかにすることも重要である。現在、COPDは治療可能な疾患と認識されている。COPD早期発見による治療への展開が、長寿社会を迎えるための取り組みにつながることを期待したい。

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