2018 年 45 巻 6 号 p. 755-769
日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン(GL)2017年版」では、リスク評価はLDLコレステロール(LDL-C)やHDLコレステロール(HDL-C)の情報があり、冠動脈疾患(CAD)発症率がアウトカムとなっている吹田スコアを用いた。また、高尿酸血症、睡眠時無呼吸症候群も考慮すべき病態として取り上げ、末梢動脈疾患の中で腹部大動脈瘤や腎動脈狭窄も高リスク病態として取り上げた。脂質異常症の診断基準では、従来の高LDLコレステロール血症、境界域高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症、高トリグリセライド(TG)血症に加えて、高Non-HDL-コレステロール血症、境界域高Non-HDL-コレステロール血症を追加した。なお、LDL-CはFriedewald式または直接法で求める。LDL-C直接法は以前よりも正確性が上がり、Friedewald式の代わりに用いることも可能である。TGが400mg/dL以上や食後採血の場合はnon-HDL-C(総コレステロール-HDL-C)かLDL-C直接法を使用する。
一次予防では糖尿病、慢性腎臓病(CKD)、非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患(PAD)のいずれかが有る場合には高リスクとし、これらがない場合には、吹田スコアに基づいて10年間の冠動脈疾患発症リスクを算出し、低・中・高リスクに振り分け、それぞれ脂質管理目標値を定める。二次予防では、LDL-C<100mg/dLを目指すが、家族性高コレステロール血症(FH)や急性冠症候群(ACS)の二次予防でLDL-C<70mg/dLの管理目標値を考慮し、他の高リスク病態を合併する糖尿病の二次予防でもこれに準ずる。新薬の登場、小児FHへのスタチン適応拡大などに伴い、FH GLが改訂されたため、診断・治療の記載を詳細に行ったが、FHは早期発見・早期治療が重要であり、健診の意義は極めて大きい。新たな脂質異常症治療薬として上市された選択的PPARαモジュレーターであるペマフィブラートや、PCSK9阻害薬エボロクマブ、アリロクマブ、MTP阻害薬ロミタピドも追加記載した。本稿では動脈硬化性疾患予防のための脂質管理について述べる。