総合健診
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調査報告
当院健診受診者における血中亜鉛濃度の世代別調査について
吉永 眞人池田 裕子樽井 里佳松永 朋子上村 雄一郎横田 真弓
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2019 年 46 巻 2 号 p. 273-275

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抄録

【はじめに】100種類以上の酵素の構成要因として生体の様々な代謝系の調整に関与し、重要な微量元素の一つとされる亜鉛は、蛋白質合成・代謝などの生命維持に関係し、亜鉛の摂取については肉類・魚類・種実類からが主とされる。特に亜鉛欠乏症においては味覚障害・舌痛・貧血・食欲不振など様々な症状が表れ、近年注目される指標の一つとされるが、各医療機関において、あまり測定されていないのが現状である。今回、我々は当院健診受診者を対象に血中亜鉛濃度を測定し、世代別に有意な差が存在するか検討した。

【対象者および対象期間】2017年7月から12月までの当院健診受診者を対象とした。

【測定方法】採血は原則空腹時の早朝採血(午前8:30~9:30)。

 血清亜鉛値の測定は、生化学自動分析器LABOSPECT008(株式会社日立ハイテクノロジーズ)およびアキュラスオートZn(株式会社シノテスト)を使用。各年代別の血清を用い比較した。

【検討方法】

 ①年代別および男女別で血清亜鉛値を比較

 ②「亜鉛欠乏症の診療指針」に挙げられる血清ALP活性値・血清亜鉛値について比較

 ③炎症マーカー(CRP)と血清亜鉛値との比較

【結果および考察】各年代別に血清亜鉛値を比較した場合、20代男性が最も高く40代女性が最も低い結果であったが、年代別および男女別で明らかな有意差は認めなかった。

 亜鉛欠乏が疑われる血清ALP活性値が 150U/L以下では血清亜鉛値基準値下限 80μg/dLを下回る割合が多く、活性値低下の一つの要因になっているのではないかと推測された。

また、女性の20代から40代および60歳以上では約4割近くで、潜在性亜鉛欠乏が疑われた。

 炎症マーカー(CRP)と血清亜鉛値は負の相関関係を認めた。

 日本人の1日当たりの亜鉛摂取推奨量は、成人男性 10mg女性 8mgとされるが、その摂取量は男女ともに不足ぎみで、症状はなくとも日頃の食生活の偏りで亜鉛欠乏は潜在的に起こりうる。食生活を意識的に改善することが重要であり、それを知る上で血清亜鉛測定の有用性が示唆された。

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© 2019 一般社団法人 日本総合健診医学会
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