2020 年 47 巻 3 号 p. 452-462
【目的】メタボリックシンドローム(MetS)は内臓脂肪型肥満に高血圧、高血糖、脂質代謝異常が組み合わされた状態で、動脈硬化性疾患を生じやすい病態とされている。従来のシンドロームXやマルチプルリスクファクター症候群から派生した概念であるが、診断項目以外の検査項目への関心は低くほとんど報告されていない。本研究では、腹囲のみ基準を超えている場合およびMetS診断項目の違いが肝機能や腎機能に対する影響を検討し、保健指導時における臓器障害予防への示唆を得ることを目的とした。
【対象】2016年度に医療法人社団進興会せんだい総合健診クリニックにて特定健康診査項目を受診した、高血圧症、糖尿病、脂質異常症の服薬および脳卒中、心臓病、腎臓病の治療歴が無い男性4,830人(50±6.8歳)、女性4,328人(50±6.5歳)とした。
【方法】Mets診断基準に沿って“腹囲”“高血糖”“脂質代謝異常”“高血圧”の該当項目により(1)MetS非該当(腹囲非該当)、(2)MetS非該当(腹囲該当)、(3)腹囲+糖代謝、(4)腹囲+脂質代謝、(5)腹囲+血圧、(6)腹囲+糖代謝+脂質代謝、(7)腹囲+糖代謝+血圧、(8)腹囲+脂質代謝+血圧、(9)腹囲+糖代謝+脂質代謝+血圧の9群に群分けし、男女別に年齢、AST、ALT、γ-GT、UA、Cr、TP、Albについて群間比較を行った。
【結果】分散分析の結果、男女ともに年齢、AST、ALT、γ-GT、UAで有意差が認められ、AST、ALT、γ-GTは脂質該当で高値、UAはMetS診断項目該当が多いほど高値を示す傾向にあった。Crは男性のみ有意差が認められ、脂質および血圧該当の場合に高値を示す傾向にあった。男女ともにALT、UAは(2)MetS非該当(腹囲該当)の場合に高値を示した。
【まとめ】MetSやMetS予備群のみならず、腹囲のみ基準を超えている場合にも肝腎関係の検査値が高値を示した。今回の解析結果から、診断結果だけに注目するのではなく、腎機能、肝機能などの特徴的な変化にも着目し指導につなげる必要性が示された。