2020 年 47 巻 3 号 p. 463-468
厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム、平成30年度版、健診の検査実施方法及び留意事項 (3) 血圧の測定」および、その中で参考とされたいとされた「循環器病予防ハンドブック第7版、血圧①血圧測定法とその評価法」には、測定回数は原則2回とし、その平均値を用いる、測定前の運動、食事、タバコ、寒冷暴露、会話などの血圧測定に影響する条件を避ける、あらかじめ排尿させ5分以上の座位安静をとった後に測定、測定部位は右上腕とし、測定は1分以上の間隔をあけて2回以上行い、差が 5mmHgあるときには安定するまで追加測定を行う、と記載されている。短時間に多数の受診者の検診を行う当機構では、これらの要因を順守することは容易でない。健診機関における血圧測定法の現状につきアンケート調査を行った。日本対がん協会および結核予防会都道府県支部の48健診施設にアンケートを送付し、32施設から回答を得た。10施設 (31.3%) が測定前の安静時間をとっていたが、長さを2~3分としているところは1施設 (10.0%)、定めていないところが5施設 (50.0%) だった。全施設で職員が測定しており、看護師のみ、が71.9%と最多であった。常時2回測定しているところは、6施設 (18.8%)、1回目で高い時のみ2回目を測定しているところは、22施設 (68.8%)、測定値として2回の平均をとっているところは、10施設 (31.3%)、低い方をとっているところは11施設 (34.4%) であった。全32施設で2回以上測定することがあったが、間隔をおいて測定するところは、23施設 (71.9%) あり、そのうち、1~2分間間隔をおいているところは2施設 (8.7%)、決めていないところが19施設 (82.6%) だった。測定中に会話をしないように指導しているところは28施設 (87.5%) だったが、深呼吸の指示を行っているところが、24施設 (75.0%) あった。健診施設に於いて、厚生労働省の標準的な健診・保健指導プログラムに記載されている推奨要件に従って健診を行うことは極めて難しい現状が示された。