総合健診
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日本総合健診医学会 第48回大会
日本総合健診医学会 第48回大会・共催シンポジウム1 トライアングルレボリューション 健診受診者データにおいて2要素間の検査組合せの類似性が最大となる男女別エイジングプロファイルの意義─球面SOMのDIMモード解析
加瀬澤 信彦徳高 平蔵大北 正昭新名 玄
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2020 年 47 巻 5 号 p. 578-584

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抄録

 自己組織化を基礎とする研究は、近年、世界中で急速な発展が見られる。この応用である自己組織化マップ(Self-Organizing Map: SOM)解析法については複雑系の事象データの分析に対して、非線形回帰法として分布型の如何に影響されないというメリットを有している。さらにSOMでは相互の類似関係を保持したまま全体を要約することができるという特長がある。

 近年、著者らが行った技術的開発においては、球面SOMの正面側と隠れた背面側の同時表示がディスプレイ上で可能となった。そのため構成要素間の類似関係を視覚的に全体把握することができるようになった。さらに要素間類似度を計算するDIMモードをSOM解析に導入することによって、要素間の類似度の定量化が実現し、要素間相互の強度比較が可能となった。このようにしてSOM解析技術の改良が進み、様々な変動要因が複雑に絡み合って存在している健診データの複雑系解析から、臨床への応用研究に向けての橋渡しの基盤が今日整いつつある。

 本シンポジウムで、われわれは日本人成人の総合健診受診者の検査値、生活習慣問診、摂取栄養調査等の情報を含むデータを一つのモデルとして取り上げて検討した。そして2つの項目(要素)間のすべての組合せにおける類似度を最新のSOM解析法によって網羅的に算出し、それらの主要な要素について男女のエイジングにおける類似度が各年齢区分で最大となる点をそれぞれ検索してプロファイルに収めた。このことにより、われわれは2要素間の類似強度が男女それぞれのエイジングに関わって変化する状況を動的に把握することができるとともに、要素組合せの臨床的意義の観点から健康リスクの最も高まる兆候年齢、すなわち未病の発生時期を推定して医療支援と保健指導を行う適切なタイミングを検討することが期待される。

 われわれはこの研究成果から、エイジングにおける男女の生体動向の情報を詳細に検討し、総合健診の健康増進システムに活用することによって、健診の一層の質的向上に寄与することができると考えている。

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© 2020 一般社団法人 日本総合健診医学会
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