2021 年 48 巻 3 号 p. 311-318
当施設では2011年4月に子宮頸部がん検診にLBC法およびベセスダシステム分類を導入し、2016年3月までの要精検者197人の精検後の治療施行状況を検証した。要精検率は1.1%で若年者に高い傾向であった。要精検者のベセスダシステム分類別割合はASC-US 37%・LSIL 41%・ASC-H 2%・HSIL 17%・AGC 3%であった。
主に紹介状返信から検証した精検後の治療状況は子宮摘出施行が3人(ASC-Hの25%・AGCの33%)であった。円錐切除施行が30人(ASC-USの10%・LSILの7%・ASC-Hの50%・HSILの42%・AGCの15%)で扁平上皮系高度異常に施行率が高かった。一方で円錐切除施行者における検診時のベセスダシステム分類別割合をみるとASC-USが23%・LSILが20%計43%、ASC-Hが7%・HSILが47%計54%、AGCが3%となり、扁平上皮系軽度異常が扁平上皮系高度異常に近い割合を占め意外に多かった。
検診受診から治療施行までの期間は円錐切除ではASC-H・HSIL・AGCの殆どが6カ月以内、LSILは検診後1年~2年が最も多く、ASC-USは検診後3カ月以内から4年~5年後まで幅広く分布していた。
若年者に要精検率が高いこと、細胞診の扁平上皮系軽度異常のASC-US・LSILは円錐切除等の治療施行率は高くないが円錐切除施行者の中に占める割合が意外に多いこと、症例ごとに異なる経過観察期間の後に円錐切除施行に至っていることより、すべての要精検者を確実に婦人科医療機関受診に繋げることにより、精検および適切な経過観察がなされ、必要な場合には適切な時期に治療が行われるようすることが非常に重要であり、そのことが若年者においては妊孕性が温存される円錐切除術による治療施行の可能性を担保することとなると思われる。