上部消化管X線検査における受検者の被ばく線量は、装置に表示される線量情報によって把握される場合が多いが、対応している装置の稼働率は低いのが現状である。今回は当会で更新した線量情報対応の透視装置(CANON製ZEXIRA)1台を用いて、2019年7月に実施した343件の上部消化管X線検査の被ばく線量を集計し、DRLs2020(Diagnostic Reference Levels 2020)と比較を行った。また被ばく線量と受検者の身体測定項目(身長、体重、BMI、腹囲)の関係について調査を行った。
面積空気カーマ積算値PKAと基準空気カーマKa,rの中央値はそれぞれ 17.0Gycm2 、64.9mGyであった。撮影Ka,rと透視Ka,rの中央値はそれぞれ 10.5mGy、53.6mGyであった。総和Ka,rに対する透視Ka,rの割合は0.83、積算透視時間の中央値は168.4秒、撮影回数の中央値は19枚であった。総和PKAと総和Ka,rのDRL値はそれぞれ 29Gycm2 、89mGyであり、今回の調査における上部消化管X線検査の線量中央値はDRL値のそれぞれ0.59倍、0.73倍であることが確認された。
身体測定項目のうち総和Ka,rと相関が強かったのは体重・BMI・腹囲で、相関係数はいずれも0.71であった。BMIと透視Ka,r・撮影Ka,r・透視1秒あたりKa,r・撮影1枚あたりKa,rの相関係数は、順に0.65・0.84・0.83・0.85となった。受検者の被ばく線量と体重・BMI・腹囲とは強い相関がある。