総合健診
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日本総合健診医学会 第50回大会
日本総合健診医学会 第50回大会・教育講演5 膵疾患に対する診断の現況と展望~膵検診の意義~
伊藤 啓
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ジャーナル オープンアクセス

2022 年 49 巻 6 号 p. 618-626

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抄録

 膵癌の90%以上は浸潤性膵管癌 (PDAC) であり、進行例での発見が多いことから切除率が低く、いまだ難治で予後不良な疾患である。他の癌種と同様に早期発見が重要で、小腫瘤で膵内にとどまるものや上皮内癌 (CIS) では長期予後が期待できることから、膵疾患に対する早期診断の確立が急務の課題である。膵癌の危険因子 (家族歴、喫煙、大量飲酒、糖尿病、肥満、慢性膵炎、膵管内乳頭粘液性腫瘍、膵嚢胞) を有する場合には、定期的な膵精査が推奨されている。膵癌の拾い上げの契機になる所見は、直接所見として腫瘤の描出、間接所見として膵管拡張である。EUSは、消化管ガスの影響を受けずに、膵臓を高い空間分解能で詳細に観察可能で、小さな病変の検出も可能で膵疾患に対する最も重要な検査法であるが、十分に普及していないのが現状である。悪性の確定にはEUS下組織採取 (EUS-TA) やERCPを用いた膵液細胞診などの病理学的手法で行う。CISは腫瘤を認めないため、病理診断にはERCPによるアプローチが重要である。膵管狭窄以外の所見として、膵の限局性萎縮や脂肪浸潤が早期の膵癌の特異的所見として注目されている。

 膵の主な腫瘍性嚢胞には膵管内乳頭粘液性腫瘍 (IPMN)、粘液性嚢胞腫瘍 (MCN)、漿液性腫瘍 (SN) がある。分枝型IPMNは主膵管と交通のある多房性嚢胞で、嚢胞内の結節や主膵管の拡張が描出されることがある。MCNは女性の体尾部に好発するcyst-in-cyst様構造を呈する嚢胞性病変である。SNの大部分は漿液性嚢胞腺腫で、蜂巣状構造を有し造影CTで隔壁が造影されるのが特徴である。

 MRCPおよび拡散強調画像 (DWI) とEUSの組み合わせは、膵の実質と膵管の評価が可能で、膵疾患の検診としての有用性が期待される。膵癌の早期診断に寄与するか否かは今後の検討が待たれる。

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© 2022 一般社団法人 日本総合健診医学会
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