2023 年 50 巻 2 号 p. 227-231
日本総合健診医学会の学会誌「総合健診」は、今年第50巻の発行を迎えました。本号では節目の第50巻にふさわしいテーマとして、「総合健診の過去と未来」を特集に組むことになり、総合健診に関係する領域ごとに、それぞれの過去や現在の問題点を整理し、近い未来ではどこまで変化し、どこを目指してゆくのかという点で各領域の専門家にご執筆いただきました。
総合健診には、健診結果を基に疾患の発生リスクを予見して、生活習慣の改善などを通して発症を予防する一次予防、既に発生しつつある疾患を早期に発見して悪化を防ぎ、早期の治療に結び付けることで予後を改善する二次予防、そして、発病後、定期健診としての長期間のフォローアップを通して、既に発症した疾患の改善や悪化防止を担う三次予防について、それぞれの役割があります。また、総合健診は疾病予防の対象として、受診者個人に対しては疾患発病の高リスク群を抽出して対応する一方、集団としての行動変容を促すアプローチを示すとともに、介入効果を検証できる可能性も兼ね備えており、予防医学のエビデンスを創出するフィールドとしてさらに積極的な姿勢を示すべき時期が来ています。
この50年の間に、これらの3段階の予防法と2つのアプローチ対象について、受診者、雇用者、行政からの総合健診に対する期待は変化してきました。これからの総合健診では遺伝子診断の応用や人工知能の利用が始まると思いますが、この特集が総合健診の発展の記録として、また、将来への展望として役立つと幸いです。
なお、本稿は巻頭言ではありますが編集委員会からの要望があり、以下に簡単に総合健診のこれまでを振り返りながら、近い未来へ向けての私見を述べさせていただきます。