総合健診
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総合健診の過去と未来
女性健診の展望と課題
石垣 洋子
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ジャーナル オープンアクセス

2023 年 50 巻 2 号 p. 242-254

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抄録

 女性健診の展望と課題を考えるとき、「性差医学・医療の発展」と「女性検診(乳がん、子宮頸がん)の普及」は両輪である。女性の健康へのアプローチはエストロゲンをはじめとする女性ホルモンとの関係性が強く、ライフステージにより性差を念頭に検討することが重要である。2010年には日本循環器病学会から「循環器領域における性差医療に関するガイドライン」が発表され性差による注目が急速に高まりつつある。女性検診に関しては「乳がん検診」と「子宮頸がん検診」が代表的なものであり、国のがん対策推進基本計画においてがん対策に取り組んでいるが平成28年度までにがん検診受診率50%以上にするという目標は未だ達成できていない状況である。日本の乳がん、子宮頸がん死亡率は増加傾向であり、女性のがん検診は現時点で効果を発揮しているとは言えない。乳がん検診においては適切な精度管理のもとに「高濃度乳房問題」などエビデンスに基づいた検診を行うことが重要である。また、「ブレスト・アウェアネス」など乳房を意識して生活する習慣をがん教育の一環として義務教育の段階から啓蒙、啓発することによりMMG偽陰性率が高い高濃度乳房女性に対してもより早期に乳がんの発見が期待できる。ブレスト・アウェアネスの普及が女性の健康意識の熟成と検診受診への動機づけとなり、乳がん死亡率減少をもたらす効果となることを期待する。子宮頸がんは、検診を受診することにより予防可能であり、撲滅しうるがんであるにも関わらず、日本では子宮頸がんによる死亡率は高く、また、若年者に発症率が増加しているのが現状である。乳がん同様に子宮頸がんへの知識やがん検診の重要性を義務教育の段階から啓蒙、啓発し、若年層での受診勧奨は早急な課題である。2022年4月より接種推奨が再開されたHPVワクチンと子宮頸がん検診の推進により子宮頸がん死撲滅を切に願う。

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© 2023 一般社団法人 日本総合健診医学会
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