健診・人間ドックを受診した高血糖要受診判定者の受診率を向上させることは、国民の疾病予防・健康維持・増進を使命とする日本総合健診医学会の重要な役割の一つである。健診・人間ドックの現場では、糖尿病と初めて診断される人に出会うことも多い。また、要治療判定に至らないまでも、生活習慣の改善により、将来的な糖尿病発症を予防する必要のある者も多い。健診・人間ドックは、要受診判定となった受診者がその後に医療機関を受診してこそ大きな意義を持つ。
我が国における糖尿病患者数は増加の一途をたどっており、2019年の「国民健康・栄養調査」によると、「糖尿病が強く疑われる」人の割合は男性 19.7%、女性 10.8%である。それらのうち現在治療を受けている者の割合は74.5%(男性で78.6%、女性で70.4%)であるが、裏を返せば未治療者が4人に1人(全体 25.5%、男性 21.4%、女性 29.6%)存在しているため、積極的に受診を促していく必要がある。特に、働き盛りの年代で受診率が低いことが特徴的である。
日本総合健診医学会としては、多施設共同で糖尿病患者数や未治療者数の正確な把握に努め、受診率を向上させるための方策を考えていくことが重要である。それに加えて、「スティグマの除去」や「アドボカシー活動」によって、糖尿病への偏見をなくし、糖尿病であることを隠さずにいられるような、糖尿病患者がより治療を受けやすい社会を実現していくことが望ましい。
本稿は、日本総合健診医学会第52回大会の「持続可能なやさしい健診学のすすめ」のシンポジウムにおける発表内容を元に、東海大学医学部付属病院での調査結果を報告するとともに、糖尿病の現状と課題や最近のアドボカシー活動について紹介し、日本総合健診医学会として糖尿病要治療者の受診率を向上させるための取り組みを考えていくことを目的としている。