総合健診
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総合健診と最新ガイドラインアップデート2025
日本人の食事摂取基準(2025年版):食事・栄養に関する基本的・包括的ガイドライン
佐々木 敏
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ジャーナル オープンアクセス

2025 年 52 巻 2 号 p. 342-352

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抄録

 『日本人の食事摂取基準(2025年版)』(以下、食事摂取基準と呼ぶ)は、厚生労働省が5年ごとに改定し公開している食事・栄養に関する基本的・包括的ガイドラインである。かつては集団給食などにその利用は限られていたが、最近では、健診実務を含め、あらゆる栄養実務に広く活用されるようになった。食事摂取基準ではエネルギーと35種類の栄養素について摂取すべき量が検討され、このうちエネルギーと33種類の栄養素について摂取すべき量が定められている。ガイドラインとしての食事摂取基準の特徴は量的ガイドラインであり、質的ガイドラインではないという点であろう。

 エネルギーについては推定エネルギー必要量と「目標とするBMIの範囲」が定められ、栄養素については5種類の指標(推定平均必要量、推奨量、目安量、耐容上限量、目標量)が定められている。このなかで健診業務に就く者にとって特に重要な指標は、生活習慣病の発症予防のために定められている目標量であろう。また、高血圧、脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病、骨粗鬆症について、エネルギー・栄養素との関連が説明されている。この章では摂取すべき量の提示はなく、定性的な説明に留まっているものの、生活習慣病の特徴を理解するうえで貴重な章であると考えられる。さらに、食事摂取基準の活用に関する説明もあり、基本としてPDCAサイクルが紹介され、習慣的な栄養素摂取量を推定し(実施可能でじゅうぶんな信頼度を担保した食事アセスメントを行い)、それを食事摂取基準が定めた摂取すべき量と比較することの重要性が強調されている。

 食事摂取基準は単に数値情報を与えるものではなく、その全体を「使う」ものへとすでに変わっている。(2025年版)は2025年4月から5年間使われる。正しくかつ積極的な活用をお願いしたいものである。

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