総合健診
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人間ドックで発見された横川吸虫症の臨床的研究
原島 三郎三輪 祐一白石 一美安住 義克岡本 美恵子田島 博正木 基文
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2002 年 29 巻 5 号 p. 872-877

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抄録
横川吸虫症は, カワニナを第1中間宿主, 鮎, 白魚等を第2中間宿主, 人, 犬, 猫等を終宿主とする疾患であり, 本邦ではグルメ志向の高まりとともに増加しているといわれている。そこで, 1998年度の東京都予防医学協会1日ドック受診者について, セロファン厚層塗抹法により虫卵検査を行い, 陽性率, 食べていた川魚の種類, 症状, 便潜血反応, 検査値の変化, 治療等の検討を行った。
横川吸虫陽性率は, 1998年度の2, 235例のドック受診者で188例8.4%であり, 1993年度の3.6%に比べて, 2.3倍に増加していた。便検査の全視野中の虫卵数は1~3個が62.3%で, 最も多い例は110個であった。外国旅行を経験していた人は21.2%と少なく, 感染は国内と思われた。食べていた川魚で多いのは鮎70.3%, 白魚43.8%であった。
1日ドック受診者で横川吸虫卵陽性例50例と陰性例50例の症状を比較すると, 陽性例では便秘4例, 食欲不振と微熱1例があり, 上腹部痛はなく, 陰性例では下痢6例, 上腹部痛1例で, 便秘, 微熱, 食欲不振はなく, いずれの症状も低頻度であった。検査値の比較では, t検定を用い, p<0.05で有意差があったのはA/G比であり, 中性脂肪値, 好酸球比率は陽性例で増加していたが, 有意差はでなかった。血小板数は陽性例で減少していたが, 有意差はなかった。GOT, γGTP, LDH, UA, TC, HbAlc, Amy, Cr, CRP, TP, Alb, RBC, WBC, Hbの差はわずかで, 有意差はなかった。便潜血反応は, 横川吸虫卵陽性例50例中陽性4例8.0%, 陰性例50例中陽性1例2.0%でいずれも低率であった。治療としては, ビルトリシド (プラジカンテル) 20mg/kg, 1回, 1日投与を行ったが, 109例の7日後の検便で, 97.2%の横川吸虫卵陰性率を得た。
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