総合健診
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在宅高齢者における24時間自由行動下血圧と尿中総蛋白mg/gクレアチニン比および尿中アルブミンmg/gクレアチニン比との関連: 高血圧および降圧療法の有用性に関する検討を中心にして
増戸 梨恵町井 涼子久保田 亮飯田 明恵奥野 純子栗原 由利子戸村 成男芝 紀代子
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2003 年 30 巻 2 号 p. 209-216

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抄録

つくば市地域の健康教室に参加した在宅高齢者222名 (平均年齢71.1±10.8歳) を対象者として, 降圧薬治療群と未治療群に分類し, 24時間自由行動下血圧および脈圧と尿中総蛋白mg/gクレアチニン比 (TPmg/gCRE比) および尿中アルブミンmg/gクレアチニン比 (ALBmg/gCRE比) の関係について検討した。
尿中アルブミン排泄量の増加に高血圧が関与しているか否かを検討するために降圧薬治療群と未治療群についてそれぞれX2検定を行ったところ, いずれにおいても有意差が認められたので, それぞれの群について, 正常ALB尿群 (<30mg/gCRE) および異常ALB尿群 (≧30mg/gCRE) に分類し, 血圧および脈圧について有意性を検定した。降圧薬治療群においては, SBPおよび脈圧に関して, すべての24時間自由行動下血圧測定条件下で有意差が認められ, 降圧薬未治療群においては, 24時間, 夜間, 随時のSBPに有意差が認められ, 脈圧に関しては, 異常ALB尿群が正常ALBに対して高値を示したが, いずれの測定条件下でも有意差は認められなかった。また, 血圧および脈圧とTPmg/gCRE比およびALBmg/gCRE比の相関について検討したところ, 降圧薬未治療群においてはSBPおよび脈圧とTPmg/gCRE比およびALBmg/gCRE比との間にともに有意な相関が認められ, 降圧薬治療群ではTPmg/gCRE比との問には相関が認められなかったが, ALBmg/gCRE比との間には相関が示されたことから, 高齢者においては, SBPと脈圧がアルブミン尿の規定要因として重要であることが確認された。
さらに, 24時間収縮期血圧135mmHg以上または24時間拡張期血圧85mmHg以上を高血圧とし, 降圧薬未治療高血圧群, 降圧薬治療高血圧持続群, 降圧薬治療正常血圧持続群のTPmg/gCRE比およびALBmg/gCRE比について有意差検定を行い, 降圧療法の有用性について検討したところ, 降圧薬により血圧が低く維持されている群では, TPmg/gCRE比, ALBmg/gCRE比ともに降圧薬未治療高血圧群より低値となることが示された。したがって, 降圧療法により, 血圧が基準値以下に維持されると, 高血圧に伴う腎障害が回避されることが示唆されたことから, 高齢者高血圧患者における降圧療法は有用であり, また, TPmg/gCRE比およびALBmg/gCRE比を定期的に測定することにより, 高齢者高血圧の合併症としての腎障害の早期発見が可能であると考えられた。

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