抄録
働く人の健康状況は, 好ましいとは言えず定期健康診断結果における, 有所見率は48.4% (平成17年度) と経年的に増加し続けており, また, 仕事や職場生活に関する強い不安, 悩み, ストレスを感じる労働者の割合は6割を超えている。
現代社会の急速な技術革新は, 我々に豊かな生活をもたらしたが, 一方では, 心理的ストレスを増大させ, 身体活動量を低下させ, 生活習慣病の増大を招くことになったと言える。
従業員の健康は, 事業所において生産性の源であり, 経営の視点からも重要な課題であることは言うまでもない。健康診断事後措置としての保健指導, THPにおける健康指導などが事業者に求められているが, 現実には多くの問題があり, 事業所において運動習慣を定着させることは難しい。
一方, 通勤時の歩行時間を増やすことや, 活動的な休日を過ごすことによって生活習慣病の発症リスクが減少するとする研究成果から, ワークスタイルに組み込める身体活動プログラムを定着させることによって従業員の健康の保持増進を図ることが必要である。そのためには, 健康づくり風土を醸成することが重要であり, その推進力となるのは, 経営者や管理監督者が自ら健康づくりを実践し, かつ従業員に啓発することである。健康的な生活習慣の継続は, 退職後も健康の維持に寄与することは言うまでもなく, 高齢化社会における事業所の健康づくりの意義は大きいと言える。