総合健診
Online ISSN : 1884-4103
Print ISSN : 1347-0086
ISSN-L : 1347-0086
メタボリックシンドロームの概念を導入した健診における生活習慣病スクリーニング上の問題点
隈本 健司原田 サトミ伊藤 克之栗田 宏一原 信之
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 35 巻 2 号 p. 268-274

詳細
抄録

平成20年度からメタボリックシンドロームの概念を取り入れた特定健診・特定保健指導 (以下, 新健診) が開始される。腹囲および/またはBMIによって保健指導対象者が抽出され (ステップ1) , 次いで血糖・脂質・血圧に関する検査と喫煙歴に関する問診によって階層化される。ステップ1で基準を満たさないために保健指導の対象外となる受診者 (以下, 保健指導対象外者) に高血圧, 糖尿病, 脂質異常症がどの程度含まれるかについて, 当協会における平成18年度の成績を用いて検討した。
ステップ1に該当する受診者7, 859名のうち, 5, 075名 (64.6%) が保健指導対象外者となった。保健指導対象外者, および保健指導対象者となった受診者 (以下, 保健指導対象者) にそれぞれ関連学会の診断基準を用いて高血圧, 糖尿病, 脂質異常症の診断を行い, 該当するものを有病者 (以下, それぞれ対象外有病者, 対象内有病者) とした。また, 保健指導対象外者について, 学会の診断基準に従って中等症以上の高血圧, HbA1c6.5%以上の糖尿病, および脂質異常症でLDLコレステロール140mg/dl以上かつそれ以外の主要危険因子が1~2個ある中リスク群をそれぞれの確定有病者とした。治療中のものは除外した。
対象外有病者は2, 030名で, 保健指導対象外者の40.0%であった。このうち, 単独の有病者は保健指導対象外者の31.6%であった。対象内有病者は1, 077名であり, 保健指導対象者の38.7%であった。
対象外有病者のうち, 確定有病者の合計1, 088名は保健指導対象外者の21.4%, 対象外有病者の53.6%であった。対象外有病者の男の喫煙率は対象内有病者の男のそれに比べて有意に高かった (p<0.005) 。
今回の成績は, 新健診において保健指導の対象外となる受診者のなかに生活習慣病有病者が比較的高率に含まれることを示唆し, これら有病者に対する何らかの施策の必要性を示す。

著者関連情報
© 日本総合健診医学会
前の記事
feedback
Top