2014 年 15 巻 1 号 p. 30-34
大腿骨近位部骨折患者の入院中合併症として肺炎が多く、近年は嚥下機能評価の必要性が高まっている。岡崎市民病院では大腿骨近位部骨折患者の嚥下障害を感度0.92、特異度0.68で抽出できるスクリーニングシートを作成し、入院後早期に看護師が嚥下障害リスク患者を抽出して言語聴覚士が嚥下機能評価を行うシステムを構築し、入院中の誤嚥性肺炎の予防に努めている。今回、病棟でのシステム運用開始後の結果を後方視的に分析した。対象は2012年10月から12月までの3ヶ月間に大腿骨近位部骨折で入院した60歳以上の患者63例とした。看護師によるスクリーニングの実施率は52.4%、実施された患者の中で嚥下障害リスクに該当した患者の割合は57.6%、実際に嚥下障害を認めた患者の割合は42.4%、期間中の誤嚥性肺炎発症患者は3例であった。スクリーニングを実施した患者の中では、看護師により的確に嚥下障害リスク患者を抽出できていた。一方で、このシステムの運用後も誤嚥性肺炎を発症した患者が存在していたことについては、今後さらに包括的な対策が必要と思われた。