口腔ケアはとくに高齢者で呼吸器合併症予防に有用であるとされる。長崎県島原病院は歯科を標榜していないが、消化器外科手術前に口腔審査を施行し、必要に応じて歯科を紹介し、専門的治療を行うことで周術期合併症の防止を図った。本研究ではその効果を検討した。対象症例は2011年2月より2013年1月までに当院で消化器手術目的に紹介となった169例とした。全例に対して外科初診時に言語聴覚士による口腔検査と口腔ケア指導を行い、専門的治療が必要と判断された場合には歯科開業医へ紹介した。歯科紹介適応と診断された症例は54例であり、内49例が歯科を受診した。術後呼吸器合併症を発症したのは169例中2例であった。一方、本取り組み以前の術後呼吸器合併症患者数は167例中12例であり、有意に術後合併症が減少した。この結果から、本取り組みは当院のような歯科を標榜しない施設における術後呼吸器合併症を予防する手段として有用であると考えられた。