本邦では2025年を頂点とした高齢化の急激な進行が社会問題の一つとして挙げられる。取り分け医療費は今後も伸び続けることが見込まれ、国民皆保険の堅持のためには、必要な医療を確保した上で医療資源の効率化を図ることが重要となる。また佐賀大学医学部附属病院においても高齢者は増加傾向にあり、最多疾患のひとつに虚血性心疾患がある。
本研究では当院の虚血性心疾患の施術による違いから、死亡率、入院回数、総在院日数、総医療費の現状を調査し、医療費の効率化に向けた対策について考察した。
当院のDPCデータ2008年7月から2013年8月までの虚血性心疾患症例を抽出し、経皮的冠動脈形成術実施群(PCI群)と冠動脈バイパス術実施群(CABG群)に分類した。更にPCI群は1回実施群、2回実施群、3回以上実施群に分類した。
PCI群とCABG群の2群間ではCABG群の方が在院日数は長く、医療費は高い結果であったが、PCIを3回以上実施した群とCABG群では死亡率、在院日数、医療費に有意差はみられなかった。
必要な医療の確保の指標を死亡率とした場合、PCIの方がCABGよりも在院日数、医療費において効率的であることが示唆された。しかしPCIを3回以上繰り返す症例において効率性は認められなかった。よって施術の違いに医療資源の効率性を求めるよりも、包括ケア病院との連携や在宅医療の強化が有効な対策となるだろう。