2017 年 18 巻 1 号 p. 19-23
ポリファーマシーとは、高齢者が多種類の薬剤を不適切に服用している状況を指し、薬物有害事象の発生や医療経済の点からも問題となっている。高齢者の多剤処方を見直すタイミングとして、入院はひとつの好機であると言われており、薬剤師は持参薬を含めた内服薬を包括的に管理し、適正化することが求められている。今回、2010年6月から2015年10月に報告されたプレアボイド事例をもとに、入院中の患者において薬剤師の介入により内服薬を減量または中止した事例を分析し、ポリファーマシー対策への課題を検討した。対象事例は488件であり、うち71.9%が70歳以上の症例であった。減量または中止の理由は、腎機能や電解質等の検査値異常が286件と最も多く、ついで重複投与102件等であった。一方で、患者の症状や訴えから有害事象を発見した事例や、漫然とした不必要な薬剤の投与中止を提案した事例は、少数であった。今回の調査により、薬学的介入の現状として、包括的な服薬情報の把握と服薬計画の立案、重複投与の回避等は実践できているが、ポリファーマシーを認識し、積極的に薬剤数を削減する介入は不十分であることが判明した。今後は、ポリファーマシーの状態にある患者を抽出し、ガイドライン等を活用して早期から有害事象のリスクを予測しておくことで、迅速かつ適切な薬学的対応が可能になり、ひいては薬剤数の削減に繋がると思われた。