2017 年 18 巻 3 号 p. 189-195
本研究の目的は、多職種で構成される外来職員の麻疹、風疹、流行性耳下腺炎、水痘に対する免疫獲得状況とワクチン接種プログラムの構築に向けた課題を明らかにすることである。A県内3病院の外来職員428人を対象とし、麻疹、風疹、流行性耳下腺炎、水痘のIgG抗体価を測定し、罹患歴、抗体検査歴、ワクチン接種歴に関する質問紙調査を行った。
抗体陽性者は、麻疹395人、風疹372人、流行性耳下腺炎400人、水痘404人であった。医療職329人と非医療職99人の比較では、風疹において非医療職は医療職より抗体陽性者の割合が低かった(p<0.05)。「4疾患全て抗体陽性者」は308人、「4疾患いずれか抗体陰性/判定保留者」は120人であった。「今回の採血結果で抗体陰性の場合にワクチン接種を受けない」と回答した割合は、医療職より非医療職の方が高い傾向にあり(p=0.061)、「4疾患全て抗体陽性者」より「4疾患いずれか抗体陰性/判定保留者」の割合が高かった(p=0.012)。「自分に接種が必要なワクチンが分からない」と回答した割合については、医療職と非医療職では有意な差はなく、「4疾患いずれか抗体陰性/判定保留者」の方が「4疾患全て抗体陽性者」より割合が高かった(p=0.003)。免疫を獲得しないまま外来業務に携わることは、病院にウイルスを持ち込む感染源となる可能性があり、他者への影響が甚大となる危険性がある。今後の課題は、抗体検査やワクチン接種の実施ができるように整備すること、それらの結果を記録で保管が出来るようにすること、特に非医療職にはどの疾患の抗体検査やワクチン接種を実施したのかを正しく記録すると共に理解できるよう丁寧に説明する必要がある。さらに、ワクチン接種の対象者に対しては、抗体検査結果に応じて各自に必要なワクチン接種の内容について丁寧に説明を行うことである。