耳鼻と臨床
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症例報告
耳下腺内リンパ節腫大を呈した菊池病の 1 例
嶋崎 絵里子倉富 勇一郎
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2021 年 67 巻 4 号 p. 233-240

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抄録

菊池病(組織球性壊死性リンパ節炎)の多くは若年女性に発症するとされ、発熱と有痛性の頸部リンパ節腫脹を主症状とする。今回、高齢男性の耳下腺内リンパ節および上内深頸部リンパ節に生じた非典型的な菊池病の 1 例を経験した。症例は 66 歳、男性。左耳前部の腫瘤と左頸部痛を主訴とし、画像検査で左耳下腺腫瘤と左上中内深頸部領域に多発するリンパ節腫大を認め、MRI では ADC 値が低値であった。耳下腺癌リンパ節転移や悪性リンパ腫などの悪性疾患や、耳下腺腫瘍と炎症性リンパ節腫大の合併を鑑別に挙げた。手術では、頸部リンパ節生検の術中迅速検査で癌転移はなく、耳下腺浅葉切除術を施行し終了した。耳下腺の腫瘤は耳下腺内リンパ節であり、頸部リンパ節も含め組織診断は菊池病であった。頸部リンパ節腫脹や耳下腺腫瘤の診断においては、典型的な菊池病の臨床像に合致しない場合でも、菊池病を鑑別診断の一つとして念頭に置くことが重要と思われた。

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