抄録
切断した反回神経は神経吻合あるいは神経移植を行っても、神経の過誤支配により声帯の動きは回復しないとされるが、音声はほぼ正常に改善する。音声機能評価と内喉頭筋の筋電図変化を記録することで、神経再生が実際に起こるのか、また筋放電が起こっているのかを検討した。2001年1月から2005年12月までに久留米大学病院耳鼻咽喉科で反回神経合併切除後に頸神経ワナによる神経即時再建を行った8症例に対し発声機能評価を行った。音声機能検査では、maximum phonation time (MPT) およびmean flow rate (MFRc) が術後1カ月より6カ月が経時的に有意に改善していた。内喉頭筋電図検査 (甲状披裂筋) では、多相性電位の所見を示した。発声機能獲得の面から反回神経即時再建は有用であると考えられた。また反回神経切断後に神経吻合を行った場合、吻合した神経は再支配を起こし筋放電が起こると考えられた。