日本耳鼻咽喉科学会会報
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原著
埼玉県における騒音職場の管理の実態
—騒音性難聴をめぐる労働衛生の問題と対策—
武石 容子
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2009 年 112 巻 6 号 p. 480-486

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抄録
騒音性難聴は著しい騒音下で業務に長期間従事することにより発生する疾患である. 現在は有効な治療法がなく, 労働衛生管理による予防が大切である. 本研究では「騒音障害防止のためのガイドライン」に示されている労働衛生管理の内容に準じた実施状況調査から問題点を分析し, 今後の対策について検討した. 方法は, 2005年に埼玉県の製造業1,000事業場を対象として郵送によるアンケート調査を実施した. 回答が得られた346事業場 (回収率34.6%) のうち騒音職場を有する140事業場を解析対象とした. その結果, 製造業において騒音職場を有する事業場は有害業務職場中最多であった. その背景は事業場規模で50人以上300人未満が47.9%, 労働衛生管理体制の整備されている事業場が82.1%とその中心であった. 労働衛生管理は騒音測定が63.6%, 騒音標示が45.0%, 騒音対策が78.6%で実施されていたが, 騒音健診は22.1%しか実施されておらず, 聴覚管理が立ち後れていた. さらに事業場規模が小さいほど実施状況は全般に低率であった. 今後は関係機関が連携して中小規模事業場に聴覚管理の実施を促し, 日本耳鼻咽喉科学会騒音性難聴担当医の協力によってその充実に努める必要があると考えた.
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© 2009 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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