日本耳鼻咽喉科学会会報
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112 巻, 6 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
総説
  • 田丸 淳一, 川野 竜太郎, 百瀬 修二
    2009 年 112 巻 6 号 p. 465-473
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    悪性リンパ腫は血液腫瘍の一疾患という位置づけであるにも関わらず, その疾患の多彩さを説明しようとすると一大叢書になるほど幅が広い. 治療法については同じlineageの疾患群においても異なることがあり, ひいては予後にも影響を与えるため早い段階で正確な診断を下すことが重要になってくる. 本稿ではこれまであまり悪性リンパ腫に馴染みのなかった読者にもわかりやすいように, 疾患分類からリンパ節生検の実際, 補助診断方法や各種亜型の特徴まで系統的に述べていく. 悪性リンパ腫の診断は顕微鏡を覗けばすべてがわかるのではなく, その過程が大切であることに重点を置いて執筆した. 今回の特集が先生方の日常診療における一助になれば幸甚である.
原著
  • 市村 恵一, 石川 浩太郎, 中村 謙一, 斎藤 知寿
    2009 年 112 巻 6 号 p. 474-479
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    目的: 再癒着率の多さや聴力改善率の低さで知られる癒着性中耳炎に対する手術法の一つとしてcartilage palisade tympanoplasty (CPT) を適用し, その有用性を調べる.
    対象: 2006年1月から2007年12月までの2年間に癒着性中耳炎症例としてCPTによる鼓室形成術を受けた9耳で, 緊張部型真珠腫の合併例は除外した. 平均年齢は35.2歳で, 2例は鼓膜後部のみの癒着で, 残りは全面癒着であった. 術前の平均聴力は3分法で20dBから102dBまで, 平均56dBであった.
    方法: 耳介軟骨を採取し, 柵状に斜め切りして並べて鼓膜再建材料とした. 2例にI型, 6例にIIIc型, 1例にIVc型が行われた.
    結果: 術後の鼓膜状態に関しては, 再癒着は1例もなく, 穿孔例もなかった. 一過性の鼓膜表面びらんが2例見られたが局所処置で軽快した. 聴力については術後6カ月の段階で評価し, 気骨導差15dB以内が3/9, 15dB以上の聴力改善が5/9, 聴力レベル30dB以内が3/9で, これらの一つ以上を満たす成功例は7/9 (78%) であった.
    結論: 予想を上回る成功率であった. CPTが癒着性中耳炎の基本術式になり得るかについては, 症例数を増やして長期の経過を見た上での検討が必要であるが, その期待に応えうる可能性がある.
  • —騒音性難聴をめぐる労働衛生の問題と対策—
    武石 容子
    2009 年 112 巻 6 号 p. 480-486
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    騒音性難聴は著しい騒音下で業務に長期間従事することにより発生する疾患である. 現在は有効な治療法がなく, 労働衛生管理による予防が大切である. 本研究では「騒音障害防止のためのガイドライン」に示されている労働衛生管理の内容に準じた実施状況調査から問題点を分析し, 今後の対策について検討した. 方法は, 2005年に埼玉県の製造業1,000事業場を対象として郵送によるアンケート調査を実施した. 回答が得られた346事業場 (回収率34.6%) のうち騒音職場を有する140事業場を解析対象とした. その結果, 製造業において騒音職場を有する事業場は有害業務職場中最多であった. その背景は事業場規模で50人以上300人未満が47.9%, 労働衛生管理体制の整備されている事業場が82.1%とその中心であった. 労働衛生管理は騒音測定が63.6%, 騒音標示が45.0%, 騒音対策が78.6%で実施されていたが, 騒音健診は22.1%しか実施されておらず, 聴覚管理が立ち後れていた. さらに事業場規模が小さいほど実施状況は全般に低率であった. 今後は関係機関が連携して中小規模事業場に聴覚管理の実施を促し, 日本耳鼻咽喉科学会騒音性難聴担当医の協力によってその充実に努める必要があると考えた.
  • 角南 貴司子, 高山 雅裕, 岡部 宇彦, 山根 英雄, 栩野 吉弘, 児玉 豊城, 根来 伸夫
    2009 年 112 巻 6 号 p. 487-490
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    Churg-Strauss症候群の1症例を経験した. 症例は56歳男性. 主訴は耳閉感であった. 慢性副鼻腔炎に対して約7年間服用していたベタメタゾン配合d-マレイン酸クロルフェニラミンを中断後に気管支喘息を発症した. その後, 難聴, 耳閉感が出現し, 耳漏中に好酸球を多数認めたため, 好酸球性中耳炎の可能性を考慮し, ステロイドの局所投与およびプランルカストの内服を開始した. 喘息の悪化時にプレドニゾロンが投与されたが自己中断し, その直後より発熱, 手指のこわばり, 睾丸痛, 顔面の知覚過敏・疼痛, 体幹の皮疹, 下肢の冷感, 下肢のしびれが出現, 同時期よりMPO-ANCAが陽性となり, 末梢血中の好酸球も増加しためChurg-Strauss症候群と診断された. プレドニゾロンおよびシクロホスファミドの投与を行ったが, シクロホスファミドによると思われる好中球減少が出現しプレドニゾロンのみの治療となった. 現在はプレドニゾロン内服のみであるが, 喘息, 血管炎症状は消退しており, 中耳所見, 鼻腔所見も良好である.
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