情報通信政策研究
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寄稿論文
分人型社会システムによるAI共存社会の枠組みに向けて
武田 英明
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2021 年 5 巻 1 号 p. 113-129

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抄録

本稿では、高度情報化社会における人のあり方として分人型社会システムを提案し、議論を行った。個人(individual)を分割不可分な一つの存在とみなすのではなく、個別の関係性によって生じる人の部分的な存在として分人(dividual)を導入し、この分人が社会を構成すると考えるのが分人型社会システムである。まず、分人という概念の出自について、文化人類学、作家平野啓一郎、心理学・社会学、哲学者ドゥルーズにおける分人のあり方を紹介する。このような分人を巡る議論の中から、本稿では、特にプラットフォーム/制度に紐づいた存在を分人と定義する。このような形で分人を定義することで、社会の活力の増大、個人の新たな幸福への機会創出、デジタル技術と融合した社会の発展が期待される。ただ、このような分人に基づいた社会、分人型社会システムの実現には多くの課題がある。これをレッシグの4つの規制の枠組みで分析した。分人で構成される分人間社会ではアーキテクチャの安定性や内部のルールと実社会の法律との関係性が課題になる。分人を前提とした実社会では、分人の社会的認知や分人の法的位置付けが課題となる。こういった課題を克服し分人型社会システムを構築することによって、人々がSociety 5.0に代表される高度な情報化社会において十二分に活躍できるようになる。

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