2013 年 16 巻 7 号 p. 528-534
人体通信はウェアラブル機器間の新たな通信方法として注目を集めている。ウェアラブル機器は小型軽量かつ長時間使用可能であることが求められている。したがって,人体通信機器においても,変成器やスタブなどの追加部品を用いずにインピーダンス整合をとり,伝送特性を改善することが重要である。このため本研究では,送信機電極の入力インピーダンス特性を三次元電磁界解析により計算した。詳細人体モデルを用いて計算された入力インピーダンスは,均質円柱モデルを用いた場合と大きく異なった。さらに,人体腕部の各組織を,他の組織で置換した場合を計算した。その結果,皮膚,脂肪および筋肉が送信機電極の入力インピーダンスを決定する主要な組織であることが明らかになった。加えて,腕部周囲の電界分布と送受信機間の伝送特性も同様に,皮膚,脂肪および筋肉によって決定されることが明らかになった。本研究で用いた構成の送信機を用いて高周波信号を励振した場合,腕内部のSARは安全基準を下回ることが確認された。