抄録
サツマイモ葉の有効利用の可能性を検討する目的で, これら緑葉乾燥粉末をパンに添加し, その製パン性と品質について実験を行った。
(1) ファリノグラムでは, 緑葉乾燥粉末を添加するとミキシングによる安定性が低下することが認められたが, パン生地の膨張力はやや良好であった。したがって, 緑葉乾燥粉末添加パンを調製する際は, ミキシングを無添加パンより短くする必要がある。その他の製パン性には問題はなかった。
(2) サツマイモ葉凍結乾燥粉末をパンに添加しても, その比容積, 水分含有量, デンプンの糊化度およびパンの硬さに対して影響を及ぼさなかった。しかし, 色調はモロヘイヤ葉乾燥粉末添加パンに比べ, やや明るさが低かった。また, 分析型官能検査においてもサツマイモ葉凍結乾燥粉末添加パンは, モロヘイヤ葉乾燥粉末添加パンと近似した評価を得た。嗜好型官能検査では, 色のさえ以外, 両者のパンとも無添加パンと有意な差は認められなかった。これらの緑葉乾燥粉末を添加したパンの組織構造では, 食物繊維と思われる膜状のものがグルテンを覆っている様子が観察された。
(3) サツマイモ葉凍結乾燥粉末は食用として利用でき, 新規の素材としてその利用性に期待が持たれた。また, サツマイモ葉凍結乾燥粉末を2%添加したパン1009中には, 食物繊維2.89, カロテン49μ9, カルシウム87mg, ポリフェノール11mgが含有され, サツマイモ葉凍結乾燥粉末の添加によってパンの機能性を向上させる可能性が示唆された。パンは, 毎日食べることもできるため, 機能性成分を毎日容易に摂取できる点でも注目され, 健康の維持・増進に役立つと考えられた。