抄録
わが国では過半数の公共入浴施設が入墨のある客の利用を断っているとされる。入墨の有無のみを根拠に施設利用を拒否することの問題点も指摘される中で、議論を深めるための客観的なデータや論考は不足している。本研究では、公共入浴施設10施設、温泉協会・観光協会2施設を訪問し、施設管理者等への半構造化インタビューによって、入墨の取り扱いに関する方針やその影響、問題点や課題を聴取して整理した。その結果、グレーゾーン的な取り扱いの実態、それによるパラドックス的な事象の発生、組織的対応の困難さが示された。また、一般利用客のステレオタイプを変容させるアプローチの検討について提案された。